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Posted by 株式会社 群馬webコミュニケーション at

2010年04月28日

撮影顛末記②ーこれも一編のストーリィー化

 品木ダムでは、ダム堤の年一回とやらの点検作業に遭遇できた。
 帰途、Rさん宅に立ち寄ると、一日奥山の田んボにいたとのことで、夫妻でお風呂に行くところだった。「一緒にどうだい」と言われたが、暮色の立ちこめる中、まだやることがあったのだ。土地の方と一緒だと無料で入れる。何度かお世話になった。
 
 急いで、あることをこなし、続いて、薄暗がりの中、久森のQさん宅の田にセリを採りに行く。原木しいたけの生産も終わッてしまった現在29日のイベントの販売用の色どりとして、少しでも欲しいのだ。
 車は久森沢の対岸の、転居後、ほどなくしてお亡くなりになったSさん宅の跡地におく。黄色の水仙の一群れが月夜に際立つ。
 昼、Qさんに国道上から見た感じで「もう、田んぼ、起こしちゃったみたいね」と言うと、「まだ、起こししねえよ」と言われていたが、薄い月明りで透かして見るので定かではないか゜、どうも様子が違う。畔際に、セリがことごとくないのだ、誰が採ったのかなと思いつつ、進んでみたが、次の田も次もなので、そのうちに畔際の黒いビニールを剥いだのだなと分った。
 手探りながらも、勝手がわかる田んぼなので、夢中で小一時間、採った。結構、寒さが身にしみてきて、限界を感じる。
 土地の方もこんなことはしないだろうなと感じた。前回、Tさん宅で伝えると奥さんから「夜になるとねイノシシがでるよ」と言われたが本当に寂しい。やんば館の外灯一つなく、2号橋と、吾妻線の上下線の灯りが夜目に目立つ。

 帰途、久森沢でセリを洗おうとしたが、すでに7時半、さすがに断念。セリを水道水で洗うのは並みの手間ではないが。便利な竹ザルね忘れてきてしまった。
 泥だらけりの手とカマをあらい、水も飲もうとしたが、これもやめた。上流、橋上の旧第一小の跡地に飯場がてきて、そこからの汚水も流れてきて、「もう、清水じゃなくなったよ」と、移転した後もちょくちょくと農作業に訪れていたSさんが寂しそうに語ってくださったのを思いだして以来、気をつけている。見上げるとプレハブ2階建の灯りが煌々としている。
 Sさんは体格の良い、明るく大柄な方で、長野原町にいればそれなりの役どころの方だったろうに、高崎市近郊の見知らぬ土地でのその葬儀はご親族以外の会葬者は少なかった。
 新聞で見て、出過ぎかなと迷いつつ、開式すれすれで会場にかけこむと、親族席でQさんが肩を落とされうなだれていたのを思い出す。あんな意気消沈したQさんの姿を見たのは初めてだった。「デシャバリ女」と叱られるかなと思って、御焼香の時、Qさんの前を通るのに神経を使ったが、たぶん、うなだれていて気がつかれなかったろう。
 出口で、簡単なごあいさつをすると、遺族はことのほか、喜んでくださった。

 帰途、余り「忙しい。忙しい」を連発なされるので今日も伝えきれていないことを、伝えたくてQさん宅に立ち寄る。すると、小道を歩いてみえる。犬の散歩でもないらしい。
 徐行しても、心そこにあらずの真剣な゜表情で、前を向いて通りすぎられるので、窓をあけて挨拶。
 「アンタか。なんだまだ、いたんかや」と言う。「昼間、お断りしたようにお宅のセリを採らせてもらっていたん」と言う。
 車を止めて、何をしているのかと問うと、「タヌキのやろうがでたんで、ジャガイモでも荒されたら困ると思って、大五郎を放してゃったら、戻ってこねえんだ。その辺でみかけなかったかや」とのこと。
 ジャガイモはこの前、来た時、転がっていたから、最近、植え付けられたのだろう。お年寄り二人での農作業は。写真を撮るので待っている方も、はがゆくなるほど時間がかかる。一畝と゜ころか、半畝やっては二人で休まれるのだから。その手間暇で植えたジャガイモをやられては辛いのも理解できる。
 「えぇ、タヌキ」。大五郎ちゃんは、こげ茶の霜降り模様の柴犬の子犬。犬小屋には「大五郎の家」と記されている。
 思わず、「タヌキに負けちゃんじゃない?」と不安を増させることをいってしまった。 「うん、前にな一度。追い詰められてな……」。 とよりうろたえ気味になって、オロオロとまた探し出された。
 この大五郎ちゃんは2年ほど前に大病をした。その時のQさんの連日の医者通いの日々と気落ちを知っているので、オロオロ状態もさもあらんと思えた。寒さで腰が抜けたとかで、以来、夜は玄関に入れている。この方にとって大五郎は家族なのだ。
 車を門口に止め、私も探してやろうとした矢先、猫のような白いものが走ったのが見えた。程なく、大五郎ちゃんが元気に走ってきて、今度は水田に入り、匂いを嗅いでいる。
 さすがは柴犬。 
 一安心したらしく、Qさんは生気を取り戻したように、またいつもの口調になった。で、自宅へ戻りながら、用件を手短に伝え、意向を伺った。「まだ先で良いや」と先延ばしなされるのも、いつもの癖。
 辞して、ぐるっと周囲を廻って消防小屋近くまできたら、いつのまにか大五郎ちゃんが前を走って危なくてならない。車を停止し窓を開けると、よじのぼるようにして窓に顔を近づけてくる。思わず車から降りて、駆け抜ける後姿に「大五郎ちゃん、おじいちゃんを大事に守ってあげてよね」と投げかける。
 おぼろな月が鈍く春の山里を照らしていた。
 これも、もし私に映像技術があったなら、短いストーリーになったろうに……   


Posted by やんばちゃん at 21:36Comments(0)八ッ場だより