2010年04月14日

数百年来の沢を追われる、ワサビや野草たち

 八ッ場の春を感じさせる代表的な、産物に野生のワサビがある。

 その自然界の中でも、これまで比較的手づかずだった横壁奥地で、現在、大規模工事が始まってしまいました。
 しかも、そのほとんどの土地が、私が親しくさせて戴いてきたOさんの家の周辺で、Oさんの所有地なのですが、訪れるたびに変容してしまうのですから、たまりません。
 ここは、先々、交通の主要地になるのです。
 もちろん「国交省に約束を守らせる会」の主要メンバーです。この会は、出入りし始めた頃、無我夢中で長野原地区を除く、水没四地区内を駆け巡っていた時に、数少ないダム反対の地主さんたちの合衝連合の必要性に迫られて、ご意見をつなぎ発足したものです。
 しかし、時間が進むにつれ、それぞれのお立場も加わったり、まぁ、記すに記せない妙な動きに振り回されてしまいました。
 
 そして、「絶対に売らない」を誰よりも強く主張していたOさんも、数年間に及ぶ執拗な再三の国交省のはたらきかけや周辺の住民のかげ口・白眼視に耐えかねて、ついに一昨年頃に、まずめがね橋の延長上の宅地を売却。直ちに工事が着工され、う回路ができていました。それが0さん宅解体につながるための道路整備であるとは、部外者の私にはわかりませんでした。続いて、家の廻りの広大な畑地も手放さなければならなくなったのです。
 
 先日も、伺った際に、奥さんが自生する面積が極端に少なくなった今年も、フキノトウを取っておいてくださって、たくさん下さいました。少し日が経っていたので、早速、調理。おおまかに切って大量のフキ味噌をつくって、今朝も食べました。
 さらに、洗いかごの中で、泥を落とされていたワサビの苗を指して、「持っていく?」とおっしゃったのです。袋に包んでくださりながら、「そうだ、こっちの洗わないのも持っていく?」とおっしゃたのでした。
 もちろん、私は大喜び。
 町場の者にとっては、ワサビは憧れの天恵物。
 奥さんは包みながら、「根はね、ヒゲを採って、ビニール袋に入れて叩いてみて」と食べ方を教えてくださりつった。
 葉ワサビの食べ方はしっている。でも、まだ小さな根付きのワサビは、食べるのはもったいなくて、植えたことはあるけれど、知らなかった。
 というのは、昨年春やはり、新築の家の脇を流れる疎水べりに自生していたワサビの数株を、「どうせ、トラクターでつぶされるだから、持って行きなよ」と行って、Oさんがスコップで掘ってくださったので、大事に鉢に植えてある。今年早々、芽吹いきた時はうれしかった。鉢に植えたのは、夏場の暑い時に、移動が可能となるように考えたのだ。毎日神経使って、夏場は木陰の涼しい処を見つけては移動させ育ててきたのだ。
 私の大好きな自然体の小さな流れだったが、現在、悔しいけれど、ならされてその一帯は広大な平地になった。
 以下の写真は、わが家で育っている八ッ場のワサビたち(撮影日 2009年12月)




 「工事でつぶされるから、端の方をもったいないから採ったんだけれど……」
 「ええ、じゃ、あの沢もつぶされるの?」と聞く。
 「そうだよ、この辺はみ~んな」
 清冽な水が勢いよく流れていた疎水べりに設置されていた、水車も移されていた。
 でも、何よりも書ききれないが、こんもりとした小山の下の沢筋に浅間石に覆われた平地に群生していたワサビの一面の花。
そして、ほどなく養蚕にかわって、吾妻農協の推奨により、秋田から苗を大量に取り寄せ植え付けたというフキの群落。私の身長よりも大きくなって、直径は3㌢近いのもあった。野生の野ブキもあって、香りが違うそうである。
 さすがにその斜面一帯には、私も遠慮して、長い間、つぶさに足を踏み入れるのははばかってきた聖地に近かったのに……
 さらにそれらを見下ろす、いちょうの大木も切り倒さねばならないとのこと。先祖伝来のこの家のシンボル的な存在だったこの木はギンナンをたっぷり実らせ、家計を支え続けたという。
 ちなみに、ギンナンとワサビを暮れに出荷すれば、この辺りとしては、荒巻ザケなども飾られる豊かな正月が迎えられたそうである。このお宅のワサビは元来は、野生のワサビだつたそうである。確かに伊豆地方などのに比べて、葉も茎も小さくてしまっている。
 何年か間や、受精が落ち粒が小さくなったことに加え、高齢の身体でムリして出荷しても採算割れらしく、自家用のみで拾われなかった年があった。年明けの厳寒期、草木が落ちた地面に、おびただしいギンナンがちらばっていたことがあった。ギンナンが大好きな私は、「もったいない」と感じた。通例、奥さんはこれらを丹念に拾い、コタツにあたりながら殻をむき、中味だけにして冷凍しておかれる。そして、手間暇かけたそれを、惜しげなくくだされる。むいてあって、直ちに使えるので重宝ものであった。
  
 「もったいないねぇ。悔しいねぇ」と二人で眼前の斜面をみつめて、嘆息した。
 
ただ一つ、ほっとしたのは、今年の厳寒期の2月初め、よもやと思いながらも何となく予感がして、お堂の移転地に上った際に、私はこの辺の小高い雑木林一帯を歩き、沢を超え、足場のない急斜面といか絶壁を必死で伝い降りて、雪に覆われたワサビたちも撮影。疎水の流れの概要をのみこんでいた。周辺一帯の落ち葉の上には、野ウサギの糞がいっぱいあつた。近くのOさん所有の水田では、収穫期を前にし数年前の一晩、稲をクマに全滅させられたことがあった。
 もう、あのつららの下がった様も、凍てながらも雪の下で、緑色の葉を持ちこたえていた、写真の健気なワサビたちの姿も、永遠にみえなくなってしまうのだ…… 

 中1日、経って心ばかりのお礼をもって、お邪魔すると0さんがいらして、「お茶飲んでいきなよ」としきりにおっしゃってくださったが、私は少しでも陽のあるうちに、カメラに収めておきたくて、辞して沢へ登らせて戴いた。
 先日、戴いたのは、最も早く工事にさらされる、細い疎水の流れの小さな中州になっている、竹や木々の間のものと奥さんが言ったように、斜面にはまだおびただしいワサビが自生していて、今年最後の花のつぼみを持っていて、早くも1、2輪、白い花が咲いているのも見られた。
 その脇には、アズマイチゲの清潔な純白、紅を持ったのもある。「ワァー」と思う。道沿いの陽だまりにはカタクリが。
 0さんご夫婦は、さらに奥地に代替えのワサビ田を用意したそうであるが、この環境はもう絶対に再生しない。
 アズマイチゲもカタクリも、何十年もの落ち葉の堆積による腐葉土の上に芽生える野草で、たやすく再生できるものではない。

 惜しい、惜しい。
 耳にしたばかりのニュース、尾瀬保護財団の活動開始のことが耳元によみがえる。ここも、八ッ場の自然を語るにふさわしい保護地域に出来ないか。
 それに比べて、P委員長宅では、小型の車一台がやっとの自宅脇の細道が、なんと2車線の広々とした道路になっていた。これに対しては、村のアチコチで不思議がられてきた。
 「なにも、そこにジャンクションを持って行けばいいのに」と言いたくなる所以だ。

 0さんにも、つきものの悪評、「ゴネ得」的なウワサ言葉があることは、私も耳にしてきた。でも、何百年にもわたり営々と築き上げてきた、豊かな自然環境を全て、コンクリートで覆ってしまわなければ、ならないのだ。
 幾ら、金をもらってもあがない切れない。売りたくてうるのでなく責められて攻められ続けて仕方なく決心するのだから、代替え地などに注文をつけなければ、腹の虫がおさまらないだろう。
 国策とは何なのだろう。
 
 前原大臣の「中止宣言」に対して、大喜びした0さんご夫婦の笑顔が忘れられない。恐らく、水没地でも数少ない大喜び組のお二人であった。そして、「中止って言うんなら、工事も中止にしなけりゃ」と吐き捨てるように語っていたOさんの言葉の裏が、今になってわかった。

 悔しいけれど、どうにでもならないものであろうか。せめても、あの斜面の沢筋だけでも、浅間山の噴火とその自然情景の景観として、国道脇の自然公園として残せないものか。
 あの樹齢何百年かのギンナンの木を残せないものか。
 設計変更など、出来るものだろう。

 私は帰宅し翌朝、急いで、泥つきのワサビの全部をクリーン作戦で借りている、元は水田に移植した。今朝、行ってみたら、しおれかけてしまっていた。慌てて、水を運んでくれた。夕方、少し、生きかえしてくれていた。
 気温がちがうから、ダメかもしれないが、どうか根づいて欲しい。


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Posted by やんばちゃん at 23:48│Comments(0)八ッ場だより
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