2011年03月20日

職を辞したある原発技術者の痛みの譜

 3/20 その二



 本日はお彼岸。朝、近所に住む姉が、ぼた持ちを作ってきてくれました。ちょうど、朝食の支度中でしたので、さっそく、一つをパクリ。でも、写真に収めました。あしらった菜の花は、昨日の天ブラにした残り。それこそ、昼食に間に合わせるための、福島原発並みの“時間との闘い”でしたから、食材を全部揚げきろうとは思わず、業務用大袋のイカもハゼも次回用にかなり残したのでした。ちなみに、このおはぎも残っています(お好きな方に手伝って下さいな。食材はモチ米も始め無添加の品です)。
 被災地の皆さん、明日の彼岸の中日をむかえ、どんなお気持ちでしょうか。平素だったら、ご先祖の供養はねんごろになされた地域ではなかったでしょうか。

 さて、一昨日ご紹介した、「原発一問一答」に快くお答えくださった上に、責任所在の面において、「お名前出させて戴いていいですか」との依頼にまたもご快諾くださり、念のため、ご自分のご経歴も記してくだされたH・Sさんこと、杉山さんから、コメント欄に以下のお便りを戴いてました。
 内容のある文面ですので、本欄で改めて転載させて戴くことに致しました。
 当方、お知り合いになってからすでに数年間経ちますが、科学の面部法律問題に極めて明るく、独走しがちな当方の手綱をいつも引きしめてくださる、杉山さんの私的なご経歴に言及したこともなければ伺ったのも初めてです。
 ご経歴の末尾の退職にいたるまでの処は、前回は考慮して、割愛しさせて戴いたのでしたが、ご本人にとっての最大の痛みは、組織の中での「事故隠し」(原発の歴史の過程では今の視点でみれば小さな通過点の一つとのこと)に加担せざるを得なかった煩悶にあったということでした。今回、初めて活字にしてくださったとのこと。
 お若い日に、教授との対立から研究室を去られ、三菱重工業の新型炉技術部に就職。そして良心の呵責にさいなまされ離職された過程を思い出すことは、この20年間、おそらく精神的な痛みの日々だったことと存じます。
 ご自身も、今回記したことで、「ふっきれた」と述懐されています。思わず「じゃ、カミングアウトですか?」と申しますと、電話の向こうの声は笑っていられました。今般、心ならずも長年、封印されていた痛みを勝手にこじあけてしまった当方ですが、こういう良心的な研究者が原発問題の指導者として大学に残っていてくださったら……と思われてなりません。
 このように、原発は戦争と同じく「兵器」と言っていいでしょうか。
 
【3月18日その三「レベル5にひきあげ」に、寄せられた杉山さんのコメント】 
 結果論になりますが、福島原発の事故の直接の原因は、津波の高さの想定が極めて甘かったということです。 
 原子力プラントの安全設計においては、1万年に1回、10万年に1回、いや100万年に1回の事象まで対策を考えています。 しかし、所詮人間が考えることです。
 そこまで考えるのに、わずか数百年に1度の規模の津波を考慮しなかったのです。
 いったい何人の専門家が、想定する津波の高さについて本気で考えたでしょうか。おそらく、関連した全ての方が津波の高さは専門外として、誰かが言い出した数メートルの高さを鵜呑みにしてしまったのでしょう。
 結果として、想定される津波の高さは見直されることなく、そのままになっていたのでしょう。今回の事故の対応は、専門家の誰もが考えていなかったことです。しかし、消防車やヘリによる海水散布など原子力以外で培われた技術で何とか冷却を確保しつつあります。 
 しかし、「もんじゅ」ではこれが出来ません。水や空気と触れると発火する液体ナトリウムを冷却材に使っているからです。
 もんじゅで同じ事態が起きたら、なすすべがないのです。さらに、「もんじゅ」では福島では問題にならない再臨界(核爆発)の可能性もあります。 
 たしか、安全審査の途中で、炉心溶融に備えて、コアキャッチャー(再臨界が起きないように融けてきた炉心を受け止めて分散させる)を付ける付けないという議論をしていたように記憶しています。
  原子力プラントは極めて複雑なシステムで、もはや生き物であるかのようです。生き物を人間が本当にコントロールできるのだろうか。現役時代、そう思っていました。 事故が起きても、内部の状況は見えませんから、温度や圧力から何が起こっているかを診断しなければならないのです。これ自体が困難を伴う作業の上、温度計や圧力計も故障するのです。しかも、発電所全体を把握している人間が誰一人いないのです。
 他のシステムならば、得られる利益が大ききければそれでも良いのでしょう。しかし原子力は、いったん事故が起きた場合の影響が大きすぎます。
 今回の事故で、東電や政府の対応を批判する意見が沢山あります。それらはもっともな意見です。しかし、自分が東電の担当者の立場になったらもっとうまく対応できるのでしょうか。
 私の答えはNOです。  
 そうだとしたら、人間が作った組織の実力はあの程度なのです。批判を浴びている東電ですが、所詮のあの程度の対応が、今の人類の実力なのです。 
 それを前提に原子力プラントの設計も進めなければなりません。嘘も付くしミスもする、そんな人間が設計し運転するのです。それを前提に設計する必要があります。原子力や航空の分野では、フールプルーフ(バカ防御)という設計思想があります。それをもっと広義に考えるべきでしょう。
 そう考えたとき、原子力は、個人がどんなに一生懸命やっても、遙かに限界を超えています。 そういった意味で、少なくとも、私には人智を超えている「ばけもの」ように思えます。原子力、特に「もんじゅ」は。

 最後に、杉山さんのご経歴を前述の記述の参考までに、全文記します。

 83年 東北大学大学院原子炉工学専攻修士課程修了。
 同年から90年 三菱重工業 新型炉技術部、設計部勤務
主に大間に計画されていた新型転換炉、もんじゅ、ふげんなどの設計に従事。ふげんでは事故隠しに加担。確率論的安全性評価など新型炉において、重大な事故をどう設定し評価するかという安全設計思想の分野に興味を抱いていた。
86年 チェルノブイリ事故調査を担当したことを機に原子力の安全性に疑問を抱くようになる。同年、うつ病になる。その後復職と発病を繰り返すも、90年退社。



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