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Posted by 株式会社 群馬webコミュニケーション at

2009年11月02日

それ河川は清浄潔白也  拙著転載・まえがき(三)

 昨日に続いて、本日も『八ッ場ダムーー足で歩いた現地ルポ』のまえがきの続きを転載させていただきます。


鈴木郁子著 『八ッ場ダムー足で歩いた現地ルポ』(2004年12月刊)より
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仮面かけ直し戦術で、ムダなダム増額に拍車

 八ッ場ダムは期間もギネスブックに掲載されかねないほどの最長なら、事業費も最大。質量ともに日本一の金喰いダムとなった。
 二〇〇三年一一月二〇日、いつかいつかと待たれていた事業費の値上げがなされた。この後の動きは、活火山爆発の様相となって、負担を強いられる下流都県にまさに燎原の火のごとく広がった。同年の春先、国土交通省八ッ場ダム工事事務所に「値上げはいつ頃ですか」と問い、何度めかの質問の断片をつなぎあわせると、「吾妻町の補償交渉が成立すれば、より金額が詳細になる秋口頃」と判断した。翌日、念押しの電話を入れると、慌ててぼかし始めたが、思えばこの頃、「戸倉ダム撤退。八ッ場ダムに絞る」構想はひそかに進行していたのである。
 一九八五年発表のまま据え置かれていた二一一〇億円が、一挙に二・二倍もの四六〇〇億円となった。これに水源地域対策特別措置法の九九七億円。利根川・荒川水源地域対策基金の約二四九億円を加えれば、合計五八四六億円に達する。さらに起債の利息も含めれば、およそ八八〇〇億円ともいわれる。しかも、これにて経費打ち止めの確証はない。
 値上げ要因の主な事業を抜き出せば下記のようになる。(※各都県の負担率詳細は第18章二七七頁参照)
      ※付替え国道やJRなどの値上げ額の図表は割愛 
 一 ①の東電についてであるが、八ッ場ダムには、もともと発電計画はない。
 巨額の金をかけて、東電導水管の補強対策を行うのであるから、当然、今後も東電が発電を担うものと考えるのが妥当である。国土交通省に聞くと、今後の協議に委ねるしかないという。さらに総貯水量一億七五〇万トン/秒には、東電に取水されている水量も含まれているとの回答を得た。となれば、今後総事業費の負担額などに大きな問題が生じる。
 スタート時のあいまいな計画のまま、根幹ともいうべき東電の去就を、うっちゃってきた果ての値上げ案には驚かざるを得ない。群馬県河川課に水利権を払い続けてきた東電が、水利権返上を行った場合には、新たに莫大な減電補償費が支払われることになり、近い将来、クローズアップされる最重要課題である。
 
 二 ①~④まで「地質など自然条件に係る要因」に基づくもの。
 全体で四八四億円の増加で、いかに危険な土壌であるかを実証している。ところが、努力の削減案なる五六〇億円のコスト縮減策には、肝心の地すべり対策の簡便化が目立つのだから、不安この上ない。
 三 しかも「水没関係者の生活再建に係る要因」の増額は、計算上では一一一五億円にも達するが、中味の「戸数・面積増加」は良いとしても、「建物リサイクル法による廃材処分費・運搬費の増加。貯水池護岸・防災ダムの増加」などである。
 これらの概要を知るたびに、「何だかムダな、すごいお金ねえ」と嘆息すると、水没地域ではすてばち風のセリフが返ってくる。「自分たち(ゼネコン)の仕事作りには金はいくら使ってもかまわしねんさ。それが目的だもん。だけど出ていく俺たちには出したくねえんだと」と声も震えがちに。
 
 幸いにして災害は起こらず、今や水余りの世相となって、ダムはムダだということは明々白々となった。河川法も改正され、環境に留意した自然工法が再認識され出した。  
 にもかかわらず、何とも説得力に欠ける、十年一日どころか半世紀余も経た今日もなお「昭和二四年のカスリーン台風の被害による治水・利水」の語を臆面なく振りかざす。日本の河川工学は、一九四九年の域から進展なしとでもいうのであろうか。
 今日もまた数々の指摘と多くの疑問の声を無視し、時代に逆行するかのように、なおも強行着工態勢で、昼夜を問わず工事のピッチを上げている。一部の財団法人に天下りした建設族。癒着する政財界の迷走状態にも、依然としてピリオドが打たれない。
 国道沿いに仕出し弁当屋の看板が立てられ出した二〇〇一年六月の補償基準調印後は急速に、新緑の山々の木の間越しに、えぐられた褐色の山肌とコンクリートが目立つようになった。日増しに開発面積が増えて、訪れるたびに切ない。立ち入り禁止の緑の木立に踏みこめば、通常感覚を超えた無意味さにいやでも直面する。
 用地買収の進捗度は四月現在、建設に必要な面積四三〇ヘクタールのうち、約二四パーセントにあたる一〇五ヘクタールの用地の取得が完了しているという(二〇〇四年八月末の発表では、三七〇ヘクタールとなり、三一パーセント)。
 ところで、三年後の二〇〇七年完成予定とされる肝心の代替地は、驚くことに二〇〇四年春になっても、代替予定地と勝手に地図上に記されている地権者に聞くと、用地交渉のための第一歩の打診さえなく、手がついていない。
 にもかかわらず、「川原湯地区打越での代替地の造成工事は順調」。他四地区についても「代替地の基盤整備や準備工事が進んでいる」と、年頭の所長挨拶には述べられている。
 ただし、この打越代替地は二〇〇三年一二月の現地見学の際に、国交省に問うと、誰にも文句のいわれない国有地なのであった。周辺部は手つかずの状態で、「国は本当にやる気があるのだろうか」と、時折浮上する中止説の裏づけとなるいぶかしさに包まれている。
 さて、ダム企業集団の次なる一手は、さらに経済効果の密度を積み上げるためにか、今度は環境保護の視点を繰り出す。自分たちが破壊した自然界に、美徳のダム環境施策の仮面をかけ直してのご登場と相成るしたたかさには驚くしかない。説得力なく、環境配慮のうたい文句がうつろに響くことこの上なし。
 ことあるごとにマスコミ関係者に「お宅の総力を上げて、全国のダムでこの間、使われた金額は幾らになるか、リストを出したら、スクープもんよ」といい続けてきた。
 平然と行われてきた大本営発表のインチキに、迫れる日ももはや近いと確信する。

  水との因縁に彩られてきた群馬県庁 

 その日は、冬場にしては珍しくスッキリと晴れ、稜線を際立たせた上越国境の山並みが全貌を現した数少ない日であった。
 最上階三二階、一三一メートルの高さに屈指の水源県、群馬県庁の展望台はある。
 くしくも八ッ場ダムダムサイトの提高と、ほぼ同じなのである。
 吾妻川の狭隘な谷川に高さ一三一メートル、堤頂長三三六メートルのコンクリートの塊りが出現する景観を想定すると、渓谷沿いを走るたびに空恐ろしさが迫る。緑の山の中のコンクリートの建造物ほど不釣合いなものはなく痛々しい。
 北側窓辺直下に新潟県境の大水上から南下する大利根の大動脈が、迫るように視界に入り来た。
 
 ーーー利根は悲壮である。 
 坂東太郎の名にふさわしく滔々と、時にたおやかな風情を漂わせつつ、一三一メートル下の眼下を太々と流れ去っていく。それぞれの川筋で見聞きしてきた種々くさぐさ"は黙して語らず、の風情にて、まさしく威風堂々、ツル舞う県のシンボルの名に値して恥じない。
 だが、首都圏の水がめとして開発しつくされた川筋として考える時、まさに“哭くな、坂東太郎よ!”の惻隠の情が迫らざるを得ないのだ。逝きて、再び戻れぬ水たちに、「気をつけていくのよ」と励ましたくさえなる所以だ。
 足尾鉱毒や治水に取り組んだ田中正造その人は、早くから河川や山をおろそかにすることは、国の荒廃につながると見抜いていた、エコロジーの先駆者であった。
 百年先を見通したその治水論において、水害は自然災害ではなく人造であると唱え、「天然に背き、明治政府はさらに西洋式なりとて河川を造意す」と指摘した。わが利根川河川工事は、一目散に西洋式に駆け走り、破壊された代表例と呼べよう。「それ河川は清浄潔白也」「治水は天地の導く処に従うべし」など、今に新しく迫る語録である。
                                                          (続く)
  


Posted by やんばちゃん at 23:00Comments(0)八ッ場に願う