2010年07月15日

第11回 有識者会議(三) NHKと朝日の報道

 有権者会議の中間まとめについて、昨日に続き同じく、雨宮メールを転載させていただきます。

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昨日有識者会議で出されたガイドラインについて、
NHKでは朝のニュースで、朝日新聞では今朝の朝刊1面と社会面で報じています。
NHKニュースでは資料映像のほとんどが八ッ場ダム関連のものでした。
有識者会議終了後のインタビューでも、前原大臣は「八ッ場ダムは中止」と繰り返しています。
映像をご覧下さい。(時間が過ぎるとアーカイブから削除されます)

◆ダム事業に初のガイドライン(NHKニュース)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100714/t10015718881000.html
 前原国土交通大臣が建設中止の方針を示している群馬県の八ッ場ダムなど、全国各地のダム事業がほんとうに必要かどうかを判断するためのガイドラインが、初めてまとまりました。
この中ではダム以外の治水対策を考え、ダムを造る場合とコストを最も重視して比較するとしています。
 このガイドラインは、「できるだけダムに頼らずに治水を行う」という政策転換を受け、去年12月に前原国土交通大臣が設けた有識者会議が、13日夜に公表したものです。全国84のダム事業がほんとうに必要かどうかを判断するための手順を、初めてまとめました。
 それによりますと、ダム事業の見直しは、これまでダムの計画を進めてきた国の出先機関や都道府県が、みずから行います。そして、堤防の強化や遊水池の整備、川底を深くして水をあふれにくくするなど、ダムに代わる治水対策を必ず複数考えます。そのうえで、それぞれ治水対策とダムを造った場合を、治水の効果やコスト、地域社会や環境への影響など8つの観点で比較します。
 判断にあたっては、財政難のため、一定の治水効果を前提に、建設費だけでなく維持管理費も含めたコストを最も重視するとしています。
 国土交通省は、これから一般の人からの意見を聞いたうえで、来月末にもダムの必要性を判断するためのガイドラインを正式にまとめ、地方に検討を要請することにしています。

 今回示されたガイドラインについて、河川行政に詳しい関西大学の河田惠昭教授は「専門家が密室で検討して結論を出すのではなくて、治水対策の検討をこういう形でやりますよという評価軸をきちっと示していることは評価できる」と話しています。その一方で、河田教授は、ダム事業の見直しを地方がみずから検討することの難しさについて、「自治体は今まで検討をした経験がなく、下流側と上流側、右岸側と左岸側は利害が対立するので、調整ルールを作る必要がある。それに多くの時間がかかるのではないか」と指摘しています。
 一方、ダムの見直しを求めている市民団体でつくる水源開発問題全国連絡会は「ダムの見直しを検討するのが、これまでダム事業を推進してきた地方にある国の出先機関や都道府県であるのは問題だ。結局、ダムが必要だという結論になるおそれがある。ダムの見直しは、住民も参加した第三者機関によって行われるべきだ」とコメントしています。 
 ところで、今回のガイドラインが正式にまとまれば、それぞれの地方でダムの必要性を判断する検討が始まり、その結果は国土交通省に報告されます。これに関して13日夜に記者会見した国交省の津川政務官は、ダムによって規模や地域の事情が異なることから、地方の検討会が結論を出す期限は設けないと述べました。検討には長い時間がかかる可能性があり、群馬県の八ッ場ダムなど一刻も早い結論を求めている地元の住民に波紋が広がりそうです。
<一部引用>

◆ダム頼みの治水見直し、流域で対策を 有識者会議が提言(朝日新聞2010年7月14日0時40分)<2つのチャートあり>
http://www.asahi.com/national/update/0713/TKY201007130509.html

 ダムに頼ってきた治水のあり方の見直しを検討してきた国交省の有識者会議(座長=中川博次京大名誉教授)は13日、提言をまとめた。ダムありきではなく、それ以外の治水対策の組み合わせと、ダムを建設する場合とで安全性やコストを必ず比較。関係住民の意見も聴いて判断する。水没する上流の山村だけに犠牲を強いるのではなく、下流域の都市住民も含めた流域全体で治水対策を分担する手法で、従来の考え方を抜本的に見直す。
 前原国交相は本体工事着工前の全国84カ所のダムに、この手法を当てはめる考え。31のダム事業を抱える国と水資源機構、53の補助ダム事業を抱える30道府県は、どちらがコストや環境への負荷を抑えられるか比較し、ダム中止か継続かを決める。
 これまでの治水の考えでは、洪水時の下流域での被害を防ぐため、上流にダムを建設してきた。有識者会議は、水没する犠牲への合意を得るため事業の長期化と建設費の増大を招いたと指摘。人口減少や厳しい財政状況をふまえた新たな治水理念として「流域全体での分担」を挙げた。
 ダム以外の治水対策として有識者会議は25の具体例を提示した。下流域の住宅地の道路を堤防並みにかさ上げする「二線堤(にせんてい)」▽集落を堤で輪のように取り囲む「輪中堤(わじゅうてい)」▽完成したダムのかさ上げ――など。25の手法の効果には差があり、川沿いの土地の利用規制など住民の反発を招きそうな対策もある。
 国と道府県はまず、これらを組み合わせた「ダムによらない治水対策」を9月から立案する。作業は必ず公開され、流域住民や学者、市町村長らの意見を聴く。その上でコストや安全度、環境や地域社会への影響など八つの評価軸をもとに分析。ダム継続か中止かの方針を決める。
 今回のダム見直しの発端が国の財政難にあることを踏まえ、コストを最重視する。一方で、ダムの代案は、それぞれの川でここ20~30年内に達成を目指していた治水安全度と同レベルの安全性を確保するのが条件。補助ダムを抱える道府県の多くは事業継続を求めていることから、検証が十分かどうかを国交相が判断する。検証作業の結果、ダムの方が有効との結論ならばダム建設を認める。
 政権交代の象徴となった八ツ場ダム(群馬県)のある利根川水系は、霞ケ浦導水(茨城県)や南摩ダム(栃木県)など全国最多の6事業が対象になるため、水系全体での代案づくりは長期化が予想される。
<一部引用>

 朝日社会面記事はネット上に公開されず。
 担当各位の反応と、「進歩なし」とする今本博健京大名誉教授と、「画期的」とする宮地良彦信大名誉教授の談話等です。


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Posted by やんばちゃん at 13:00│Comments(2)紹介
この記事へのコメント

 「ダムを造る場合とコストを最も重視して比較する」とは一見合理的・客観的なようです。しかし、コスト評価は何をカウントするかで決まります。この「何をカウントするか」は際限がありません(例えば自然環境の変化が人の心理に与える影響、それに伴う経済効果、比較評価に要する費用)。よって、全ての要因をコストにカウントすることは事実上不可能です。結果、この部分は恣意的にならざるを得ないと思います。
 特に、比較評価に期限がなく、支出済みの費用はカウントしないというルールですから、時間をかければかけるほどダムが安くなってしまいます。詐欺ですね。  
Posted by 杉山弘一 at 2010年07月16日 08:57

杉山様
 
 いつもながらの鋭いご指摘、ありがとうございます。
 本当にご指摘の構図は、この間、国交省が発表してきた費用対効果一つを見ても、浮かんできますね。
 本当に、国は平然として“詐欺”を行ってきましたね。
 かつて、拙著に“国は一級のペテン師だ”と記してしまったことがありましたけれど……

 どうか、この論点をもっと広く公表してみてください。
Posted by やんばちゃん at 2010年07月19日 07:07
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