2009年11月19日
東電への迂回する水ストーリィ 「あとがき」転載四
またも、拙著の「あとがき」からの転載です。
現在、吾妻川水系の東京電力の水力発電所は一五あります。
吾妻川の水のほとんどは、貝瀬や長野原地点で取水口から、導水管をとおって、松谷発電所にそそがれています。
国交省は二〇〇八年九月一二日の第三回基本計画の変更により、八ッ場ダムの完成年度をさらに五年間延長して二〇一五年にするとともに、はっきりしてこなかった発電計画の追加を正式発表しました。
なお、国が発電も行うことになれば、東電の持つ水利権に対して、国は莫大な補償金(減電補償)を支払う義務が発生するのです。この「減電補償」問題は一七年間にも及んで協議されてきた経過があります。
ために以下の、二〇〇四年時における国交省への質問の際に、答弁をテープ起こししたにもかかわらず、意味不明であいまいな発言も止むをえなかったものかとも思われますが……、本当に意味不明な応えでした。最後に「まだ、計画変更があるんですか?」と疑問符を投げつけてますが、本当に第三回目の変更が、冒頭にしるしましたように、昨年九月行われたのでした。
さて、五年後の二〇〇九年五月二七日付上毛新聞一面トップ記事、「発電量確保へ前進 導水路建設を協議」の見出しで、新たな導水路計画が打ちだされました。苦肉の策的な措置なのですが、ダム中止後はどう決着がつけられるのでしょうか。
鈴木郁子著 『八ッ場ダムー足で歩いた現地ルポ』(2004年12月刊)「あとがき」より
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建設費には、東電に迂回する水量も含まれていた
さらにもう一つ、流れ続ける水のように追い続けてきた問題に、水利権の行方がある。
第17章の「あなた、この水飲めますか」を記した一九九九年末頃、地元の方から「吾妻川の水は、ほとんど東電に使われている」ということを伺って以来、ずっと頭にあった。
ただし、土地の者なら取水口がどこにあり、隧道はどこを通って鍛冶屋沢貯水池まで流れるのかくらい、一般常識として知っていることが、部外者にはその糸口にたどりつくのに長い時間を要するものである。「今は吾妻川の水が多いから」の言葉の背景一つでも、目の前の急務に追われている身には、聞き逃してしまう。
普段は渡れるくらいの吾妻川の水量が、流されそうなほど大量になる変化に接して初めて不思議に感じることである。それとても長野原町に常駐しているわけではないから、前後の脈絡が不明で、上流で昨日、雷雨でもあったのであろうかとくらいにしか、平素は受け止めずに見過ごしてしまう。
だが、私にもようやく己の目測で白砂川、吾妻川の川筋の細部が視野に収まった。この間さりげなく集めた関係機関からの証言の断片を武器にして、周辺を固めておいてから、国土交通省八ッ場ダム工事事務所に確認した。
「総貯水量一億七五〇万トンに東電に迂回する水は含まれているのですか」と詰めた。「お上のいうことに、まさか嘘はありませんでしょね」と、「最後の一句」的な気概を持っていい放ったつもりである。そして、当初の「含まれてません」から「含まれています」いう回答を得た。
目下、東京電力(株)と群馬県企業局が、吾妻川とダム計画地点上流で取水する水利使用料について、納入窓口である県土木整備局河川課河川管理グループに発電流水占用料の公開を求めている。
以下は、八ッ場ダム工事事務所とのやりとり。
「今ですね、東電の方とはまだしっかり決めごとができていないところがあるんですよ。これから調整しなければならないことがありまして」
――では、国交省はこんな基本的な貯水量とかを決める時に全然考慮していなかったと解釈していいんですか?
「そういうことではなく、元々発電計画は今のところないと。うちの方の考えだとしたら、東電さんにはここの取水はしてもらわないつもりでいますからということから、本川に引ける分はそのまま入りますよという、考えのもとですね。要は目的云々といっていても、洪水調節があって、今度需用費の改正の中で流水の正常機能の維持が増えて、あと都市用水。で、発電はというのは今の事業計画だとない。その発電がのっかってきていないなかで、東電さんには今あるものの、減電補償をしなければならないんです」
――では、将来ダムができたとしても、発電はなしと考えていいんですか?
「今現在はなし。ダムの目的にない。ただ、まだそこは今後、協議しなければならない。今現在はまだ決まっていない。相手が発電計画を持っていたら、協議しなければならない。相手が東電になるか県企業局になるか、それを含めて全然分かりません」
――将来、変更もあるやも知れないということですか?
「そうなった場合は、基本計画の変更がありますよ」
――まだ、この後も計画変更があるんですか?
現在、吾妻川水系の東京電力の水力発電所は一五あります。
吾妻川の水のほとんどは、貝瀬や長野原地点で取水口から、導水管をとおって、松谷発電所にそそがれています。
国交省は二〇〇八年九月一二日の第三回基本計画の変更により、八ッ場ダムの完成年度をさらに五年間延長して二〇一五年にするとともに、はっきりしてこなかった発電計画の追加を正式発表しました。
なお、国が発電も行うことになれば、東電の持つ水利権に対して、国は莫大な補償金(減電補償)を支払う義務が発生するのです。この「減電補償」問題は一七年間にも及んで協議されてきた経過があります。
ために以下の、二〇〇四年時における国交省への質問の際に、答弁をテープ起こししたにもかかわらず、意味不明であいまいな発言も止むをえなかったものかとも思われますが……、本当に意味不明な応えでした。最後に「まだ、計画変更があるんですか?」と疑問符を投げつけてますが、本当に第三回目の変更が、冒頭にしるしましたように、昨年九月行われたのでした。
さて、五年後の二〇〇九年五月二七日付上毛新聞一面トップ記事、「発電量確保へ前進 導水路建設を協議」の見出しで、新たな導水路計画が打ちだされました。苦肉の策的な措置なのですが、ダム中止後はどう決着がつけられるのでしょうか。
鈴木郁子著 『八ッ場ダムー足で歩いた現地ルポ』(2004年12月刊)「あとがき」より
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建設費には、東電に迂回する水量も含まれていた
さらにもう一つ、流れ続ける水のように追い続けてきた問題に、水利権の行方がある。
第17章の「あなた、この水飲めますか」を記した一九九九年末頃、地元の方から「吾妻川の水は、ほとんど東電に使われている」ということを伺って以来、ずっと頭にあった。
ただし、土地の者なら取水口がどこにあり、隧道はどこを通って鍛冶屋沢貯水池まで流れるのかくらい、一般常識として知っていることが、部外者にはその糸口にたどりつくのに長い時間を要するものである。「今は吾妻川の水が多いから」の言葉の背景一つでも、目の前の急務に追われている身には、聞き逃してしまう。
普段は渡れるくらいの吾妻川の水量が、流されそうなほど大量になる変化に接して初めて不思議に感じることである。それとても長野原町に常駐しているわけではないから、前後の脈絡が不明で、上流で昨日、雷雨でもあったのであろうかとくらいにしか、平素は受け止めずに見過ごしてしまう。
だが、私にもようやく己の目測で白砂川、吾妻川の川筋の細部が視野に収まった。この間さりげなく集めた関係機関からの証言の断片を武器にして、周辺を固めておいてから、国土交通省八ッ場ダム工事事務所に確認した。
「総貯水量一億七五〇万トンに東電に迂回する水は含まれているのですか」と詰めた。「お上のいうことに、まさか嘘はありませんでしょね」と、「最後の一句」的な気概を持っていい放ったつもりである。そして、当初の「含まれてません」から「含まれています」いう回答を得た。
目下、東京電力(株)と群馬県企業局が、吾妻川とダム計画地点上流で取水する水利使用料について、納入窓口である県土木整備局河川課河川管理グループに発電流水占用料の公開を求めている。
以下は、八ッ場ダム工事事務所とのやりとり。
「今ですね、東電の方とはまだしっかり決めごとができていないところがあるんですよ。これから調整しなければならないことがありまして」
――では、国交省はこんな基本的な貯水量とかを決める時に全然考慮していなかったと解釈していいんですか?
「そういうことではなく、元々発電計画は今のところないと。うちの方の考えだとしたら、東電さんにはここの取水はしてもらわないつもりでいますからということから、本川に引ける分はそのまま入りますよという、考えのもとですね。要は目的云々といっていても、洪水調節があって、今度需用費の改正の中で流水の正常機能の維持が増えて、あと都市用水。で、発電はというのは今の事業計画だとない。その発電がのっかってきていないなかで、東電さんには今あるものの、減電補償をしなければならないんです」
――では、将来ダムができたとしても、発電はなしと考えていいんですか?
「今現在はなし。ダムの目的にない。ただ、まだそこは今後、協議しなければならない。今現在はまだ決まっていない。相手が発電計画を持っていたら、協議しなければならない。相手が東電になるか県企業局になるか、それを含めて全然分かりません」
――将来、変更もあるやも知れないということですか?
「そうなった場合は、基本計画の変更がありますよ」
――まだ、この後も計画変更があるんですか?
Posted by やんばちゃん at 22:06│Comments(0)
│八ッ場だより