2009年10月05日

君は舟なり、庶民は水なり 拙著転載・まえがき(一)

 2004年12月、刊行の拙著「八ッ場ダムーー足で歩いた現地ルポ」の
「まえがき」を下記に記させていただきます。
 
鈴木郁子著 『八ッ場ダムー足で歩いた現地ルポ』(2004年12月刊)よ
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  ――君は舟なり、庶民は水なり。
  ――水は即ち舟を載せ、水は即ち舟を覆す。
 流れ行く水もまた単に流されているのではなく、日々思考しながら流れて
いるはず。
 眠らされてきた水=民もいつまでも無知ではない。山川草木みな然り、一
木一草といえどもだ。
 早晩“故に民の上に在る者は以て戒懼せざるべからず”の感もなきにしも
あらず。
 隣接する長野県からの強風の手助けで脱ダムの世相下、水本来が持つ
勢いにのって、耐えてきた民衆による“舟を覆す日”がもたらされる可能性
も濃くなりつつある。
 天下りによってもたらされ、網の目のようにはりめぐらされた公共事業の
カラクリは、すでに明らか。
 今や、民意が潮流となって瀬をはやみ、国を動かす時代なのである。民は
いつまでも黙ってはいない。そもそも人間が水の流れに手を加え、自在に制
御しようとしたことこそ、おごりではなかったか。
 こうした脱ダム社会下、二〇一〇年の完成をめざす八ッ場ダム(群馬県・長
野原町)は、すでに五二年目に突入した。
 水没は三四〇世帯。移転件数は長野原町内で四二二、吾妻町も加えれば
四七〇世帯にもなる。
 「八ッ場」と書いて「やんば」と読ませる特異なダム名は、ダムサイト予定地
付近の大字川原畑、字八ッ場の、この小字名に由来すると考える。
 吾妻川左岸には「八ッ場沢」なる沢があり、吾妻川に垂直に注いでいる。
場所は八ッ場大橋の手前、ダム提建設予定地近くの一四五号線にかかる橋
下の清流である。橋の欄干の古びた石柱は文字面も欠損、磨耗していて読め
ない。語源には諸説がある。
 思えば山には山の営みがあり、里には里の暮らしがあった。
 人々はその村々の独自の地形に温められるように抱かれて、平穏に暮らし
てきた。そうした最中の一九五二年、一方的にもたらされたダム建設の通告
なのであった。
 この間、明日の生活設計も立たぬままに水没民たちの多くは、自分の判断
では何一つ踏み出せずに、半世紀にわたりダムに翻弄され続けてきた。
 特別措置法に基づく補償金は、犠牲者として当然の権利補償なのに、金銭
の放つ特有のくぐもりがアダとなって、下流の市民層とは、往々にして乖離さ
せられてきた。
 突き詰めれば紛れもなく人権問題と呼べる。
      ---以下、略ーーー
.........................................

 
 そして、去る9/17(木)、鳩山政権樹立の翌朝、記念すべきスタートの日、
上毛新聞の「三山春秋」欄では、鳩山政権スタートの内容だった。
 その中頃過ぎに、同じく冒頭の荀子の語句に筆を及ばせていた。

【9月17日(木) 上毛新聞一面最下段 コラム欄 三山春秋】
 .....................................
     ---略ーーー
 ▼中国の『荀子』に〈君なる者は舟なり、庶民なる者は水なり。
  水は即ち舟を載せ、…舟を覆す〉
 とある。庶民が不満を募らせて騒げば、君主は安穏としてその地位に留ま
ることはできないということだ。
  ▼水が流れるのは高低差だけではない。風によっても動くし、温度上昇
でも対流が起こる。選挙は「風」で表現されることが多いが「水もの」でもあ
る。これからどう動くか。〝鳩山丸〟船長の舵取りしだいだ。 
      ---略ーーー
...................................

  本当にこの国の民は、怒った。
  怒りの炸裂は、見事に変革をもたらした。
  
  そして、わが八ッ場ダムにも、風は起きた。
  残るは舵取りしだいかな。
 
 君子のことわざとは、真理に近く、
 人の世は、まさに常にもがもが……
 歴史は繰り返すものですね。

 そして、かくいう私は、睡魔にて、居眠りのフネ漕ぐ我にて、失礼。


※「三山春秋」にもありますように、冒頭のフレーズは、「性悪説」の
荀子の言葉ですが、ゲラ段階で出典名は迷いつつ削りました。
 書き出しの最初に冠することへのあるかなしかの美学とありもしな
い知識をふりかざすようで?「キザ」にしか感じられてしまいかねない
と思えたからでした。
 やはり、心配が的中。知人からの第一声。「書き出しが胸くそ悪い」
と。彼女は辛口な批評家。でも質の良い感性の持ち主として、困ると
判断を仰ぐ、私の“諸葛孔明的・軍師”です。


 


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Posted by やんばちゃん at 23:17│Comments(0)八ッ場だより
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