2010年02月02日

?“作家”なる言葉に振り回された「雪の朝」

 今朝は群馬県一帯、初雪にみまわれたようです。量的にはさほどではありませんけれど、でも積雪しましたから、本格的な初雪とよべましょう。風花、この辺では「ハアーテ」と呼んでいますが、ありましたけれどね。
 昨夕、チャイムが激しくなるので、電話の何度目かの中断をして表に出てみると、先ほど配布物をもってきてくださった詩のサークルの方の軽トラックのエンジンがかからず、「明日、晴れてから直すから、置いてくんない」とおっしゃるのでした。
 で、急いで町の端と端の距離なので、乗っているその方まで「下手な運転だのう」と言うわが運転技術でお送りしたのでしたが、行く時には大粒の氷雨。帰途には雪にかわっていました。
 で、おっちょこちょいおばさんはフロントガラスが曇って前方がよく見えず、対抗車とごく軽い接触をしでかしてしまった次第。メカに弱いこのおばさんはあらゆる機械の構造にも弱く、実は未だに窓の曇りをとる方法が良くわからないのです。最近は冷暖房をいれればという知識を得たので、慌てて暖房を入れたのでしたが、間に合わなかったのです。なお、これは私に限ってで,女性がメカに弱いというのは誤った通念で、男性以上強い女性もたくさんいます。機会がなかつただけです。その意味で皆さんにSOSを求めながらも、パソコンにしがみついているこの私です。
 ずっと座っていたので、急に表にとびだしたから頭の回転も運動能力も鈍ってました。それに家に近づく頃は胸が少々いたくて、私も心臓がわるいのかしらと思ったものでした。
 
 さて本朝、八ッ場の今度は、Kさん宅に電話。
 奥さんいわく、「大雪で。朝飯前から雪かきでまだ家に入らないんだよ」と。約60㌔離れた平地でこれだけ降るということは、八ッ場ではさぞかし大雪なんでしょう。
 これで、今年はさらに温暖化が進んだらしく、川原湯温泉街の坂道も凍てつかずで、早々とスノータイヤを履いたのにと拍子抜け気味だったのでしたが、これからは覚悟しなければならないかなと思った次第です。
 今年最初の八ッ場行きの日、笹湯からの坂道での凍てついた場所にはまり、どうにも坂が登れずで往生したことがあり、冬場は谷あいの坂道にはちかづくべからずと自戒しています。
 
 思えば、このわが運転技術、加えて猛スピードで山中の坂道を吹っ飛ばして続いてきた「八ッ場通い」。
 月に平均して仮に最低の2回にして年間24回。単純計算で少なくとも200回は往復してきたのでした。毎回、よく飽きずにと思いつつ走らせています。時折り変わった道が走りたくなって、時間に余裕のある時は路線変更をしてみる次第です。
 でも、それほど八ッ場の地は、吸引力がある魅力の土地なのです。だから、必死で護りたいのです。といっても、無力な私に何ができるわけでもありません。
 でも、“三つ子の魂、百までも”のことわざ通りの、ある信じることがあるのです。
 それはもしかしたら、幼い日に、父が買ってくれた絵本の逸話に起因しているのかもしれません。
 確か、オランダのハンス少年は、堤防の一カ所に水が漏れているのに気がつき、自分の手を差し込んで、大人たちが気がついて駆けつけるまでの間、気を失っても決壊を守ったという話でした。
 その絵本の絵づらが今もかすかに浮かんできます。
 到底、力及ばす不毛の努力と思っても、渾身の限り、試みるという思いは、己の小さな力を顧みず、私を一途に駆り立てさせる秘薬です。
 
 これまた“雪の明日の裸洗濯”と教えた祖母の言葉を信じて、昨夜来、いっぱい洗濯ものをしておいたのに、朝の一時、晴れただけでどんより。結局、生乾きのまま、しまいこむ結果に。
 車を直しに工具やブースターをもって、昨日の方がやってきました。たぶん、プラグとかが悪いということでそれも持参した由。
作業中に突然、「作家先生の日常場面を撮影してやろうか」と言いだしたのです。
 「サッカって」と一瞬、意味がわからず、この方は最後まで養蚕をしていた大農家。じゃ、高良先生の過日の講演に電話しようとしたお一人なので、間をおいてから「だって、高良先生はそんなに群馬に来ないわよ」と言い出したら、「アンタだよ。その散らかっている部屋を撮ってあげるよ」と言われて、「えぇー、私はサッカの域じゃないよ!」と驚き慌て、「そんなこといいよ。散らかって部屋なんか。まったくもうー」と周章狼狽したものです。
 そうだ。昨日、この方の一度目の時は、久々に遠方の知人との電話に夢中かつ声高に話していて、チャイムに気がつかなかったのか壊れていたのか、玄関の中から「こんちわー。いるかい」と大きな声をあげられ、あわてて電話を中断して部屋を出てみると、ずぶぬれの合羽姿で散らかっている玄関の中にいたのでした。で、二度目は激しいチャイムの連打となったのでしょう。
 その時、例のうれしい毎日新聞とそのコピーが玄関先にあったので、長年と言っても、開店休業状態の同人仲間のこの方にも、気がつかなかった言い訳と、「ここんとこ、お掃除できなくて、部屋の中がいっぱいなの」といいなから、一枚さしあけていた経緯があったのです。 
 そして、サークルの中で皮肉屋さんで名高いこの方、いわく「いつも、そうだんべ」と荒れ放題の下駄箱の廻りをジロリ。あぁ、恥ずかしいと身の縮む思いでした。
 で、「いいよ。断る。私だって、一応、女だからね」と男女共同参画推進にはあるまじき通念語を用いて、撃退ねがった次第。
 
 そうなのです。考えてみれば、新聞の伊東光晴さんの書評に、なんとも面映ゆく《作家による(政治と金」の貴重な記録》となっていたのでした。少なからず、「いいのかな」とひっかかってましたけれど。
 「作家」にほど遠いながら、「もの書きの部屋はちらかり放題」という事と、概してメカに弱いとの点では確かに通じます。
 人さまを玄関から先にあげられなくなって久しいのです。特にこの四ヶ月間はひどくなっています。「ちらかっている処がいいんだよ」という先の方の、お体裁を好まない実直な詩精神にはこの間、共鳴してきましたが、言葉の裏の皮肉さにも気がついています。八ッ場の方がみえた時、開口一番、玄関先から続いていた本の山に「これは、女の部屋じゃねえのう」と言われた私です。
 でも、いつも私でも人並みに「お掃除しなければ」と思うのです。 ですが、たまの空き時間に整理しはじめても、近所のことや会議の時間がきて中断。するとなまじの片づけは、より始末が悪くなって、老化現象も加わって置いたところが記憶になく、今度は探すのにてんやわんやでかき回す。より散らかっての悪循環。今日のこの寒い日だって、川のクリーン作戦の事務局として次回のチラシを持って、村内を一巡してきたばかり。

 思い出してみれば、わが師・井上光晴さんのトランプ占いは有名で、一時NHKで講師をやっていたとか、(たぶん、これは死後私にも良く判った“嘘つきみっちゃん”の本領でしょうが、今度、奥さんに聞いてみようと思います)私たちは本当に、とりわけ素直さでは年の割に定評のあり過ぎた私なのでした。即座にその人間の状況を把握し、夢と希望を与え、活路を与え励ますのが井上さんの占いでした。
 で、ある時の占いで、「あなたは何かのシゴトをします。しかし、それは“文学”じゃないかもしれませんけどね」と。以来、誠に素直だった私は“文学”への道から遠ざかって、事務局的な雑用係を率先して引き受けたのでした。
 同じ頃、世渡りの才覚にたけた方からも「恋愛の一つもしたことがないのに、小説がかけるかなぁ」とからかわれました。当時の私は「恋愛」という言葉を口にできないような幼さでした。で、「でも、そういうことに触れない小説だってあると思います」とは反論はしたものの、人さまのおっしゃることにまともに左右される私は、この二つの言葉は鮮明に心の底に宿って、左右されて今日にいたります。
 確か、樋口一葉の小説に「雪の朝」なる小説については、瀬戸内寂聴さんや前田愛さんの評論などで、恋愛もなく若くしてなくなった一葉の一度の恋的に、師であった半井桃水らしき人物と迎えた“雪の朝”だとか、一時、かまびすしい憶測論がありましたっけ。
 その意味深な背景もようやく判ってきた現在も、そんな気配も種もないままに独り、いつものごとくの今朝を迎えたのでした。

 従って、作家なる言葉は、伊東光晴さんの明らかに過分な思い込みでしょうが、あのご批評は、今後の八ッ場のために少なからずの糸口となることを願ってやまないのです。これもまた、素直に信じてまいりたいと思います。
 でも、おかげ様で一時、忘却のかなたに押しやって忘れていた「作家」なる言葉に酔わせて戴けましたことに、本日も伊東さんに心からお礼申し上げさせていただきます。
 なお願わくば、こちらもちょっぴり信じさせて戴きたいもの……



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Posted by やんばちゃん at 23:57│Comments(0)八ッ場に願う
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