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Posted by 株式会社 群馬webコミュニケーション at

2010年04月05日

それでも、“自然界の春”は動き出している

 人間界の相克にかかわらず、自然は季節に順じて、確実に動き出している。
 本日は極めてストレートに、八ッ場の“自然界の春”」の息吹きにふれたい。
 ダム建設は射程距離内にあった、2003年4月号の郷土誌『上州路』に掲載した11回目の「八ッ場の限りある春」と題する拙文で、以下のように記した。
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  「じゃおうじ」の名で土地の人に親しまれてきたフキノトウが、まだら模様になった雪の間から頭を出すと、八ッ場の春は動き出す。
 ほどなく落ち葉の中に、アズマイチゲの茶色を帯びたあえかな若草色を見出す。繊細な花だけに今年も無事に咲いたとほっとする。木々の芽吹きに山々が彩られ始める頃には、日々刻々度を増す緑の濃淡も花々に劣らず、見飽きさせない。その緑を基調色とし、山間に見え隠れする山桜のほのかな紅色には、色相の妙に心ときめかされ、春の喜びに全身がつつまれる。圧巻は五月の連休頃、吾妻渓谷沿いに咲くムラサキツツジであろうか。
 しかし、二〇〇三年以降の八ッ場の春は、増幅するいらだちの中にたたずむ、別れの春と呼べよう。
 緑の中に、程良く調和し溶けこんでいる水没予定地の家並み。何とも心安らぐいつもながらの山里の景色である。けれど屋内では、代替地への移転を待ちあぐねる水没民の神経は、焦燥感に満ちているであろう。
 早春のまだ肌寒い日、隣保班として親しく交わってきた隣人や知人たち家族が別れの挨拶に訪れれば、「ああ、あそこん家も出ていくか」とその後は、あわあわとして落ちつかない春の哀しみと相まって、言い知れぬ寂しさが倍加することになろう。
 そして、いっそのこと何もかも精算して、今のうちに十分とはいえないまでも、(一時的には大金の)補償金を手にして町外へ移転しようか、と考え出すのは無理からず、想像に難くない。
 四月下旬過ぎ、春たけなわの八ッ場は、個々の事情に応じた転出模様に揺れることだろう。転出希望組の意志表示もソロソロ定着し、転出の有無は二〇〇三年の一年が山場とされている。
 方向の定まらなかった、半世紀間にも及ぶ蛇の生殺し状態は脱したが、今後は代替地問題をめぐる住民同士の相克が予想され、大局的には、閉塞状況の暗い前途に彩られているように感じてならない。
 「春三月、縊り残され花に舞ふ」(大杉栄)の不気味さが漂い、まさに「行春の青葉の底に生残る」(堺利彦)的に、むせるような緑の中で、焦りつつ息を殺しての成りゆきまかせの状況といったら、いささかオーバーで感傷じみているであろうか。
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 すでに、フキノトウは至るところで芽吹いている。
 過日、訪れた時には、すでに夕刻であり、しかもデジタルカメラのカードがもう満杯で、幾度となくつぶしてきたので不可。で、写真をとらなかったのを後悔している。が、新開地のきりたった土砂のなかにも、フキノトウが芽吹いていた。


 
 ここのは黄色みを帯びていて、土中のはウドやモヤシと同じく白くて極めて柔らかいそうな、人間でいえば、乳母日傘育ちの極上品の生まれたばかりの赤ちゃんフキノトウ。それが土色の地面から首をもたげていて、ちょっとした光景なのであった。その赤ちゃんフキノトウの上記の写真(2008年4月24日 撮影)を2009年の年賀状につかったが、この土手というか断崖に林立している光景の方が妙味があったのに…… それにしても、今年は温かいのだろうか。約20日も早かった。
 採り終わってから、ひらめいたが後のまつり、今も残念きわまりない。
 果たして、この造成場所は、来年もこのままの状態でいてくれるだろうか?
  
 そして、『上州路』への連載は、この回をもって打ち切られた。なんと「限り」があったのは、「八ッ場の春」ではなく、わが草稿であった。
 理由は「内容が郷土誌の範囲をこえました」であった。確かに内容はダム建設の細部に及び、体制批判の色合いが濃くなってきていた。いわゆる発禁処分だが、若い日から読み学びこんできた文学の世界では、どうということのないものであった。本当のことをひよらずに書けば、通らざるを得ない筋道である。
 だが、版元の「あさを社」さんには、ご迷惑をおかけし続けていたと思う。ここまでは同社創始者の方の“文学の心”で、お許しくださっていたのであったろう。その後、出版化に際しても、本当に快く全文の入力済みファイルをご提供くださった。
 あらためて、御礼を申し上げたい。
 そして、制約の外れた私は、12章以下を加筆して、一冊にまとめた次第。思う存分に、手探り状態で探り当てた、ゼネコン体質と補償金問題などに言及したのであった。

 さて、目下、私の心を急きたて、「八ッ場へ行きたい」ともどかしくさせているのは、アズマイチゲの存在。
 何とも引きつけられる、可憐な草花である。
 もうすぐ、行くからね!1  


Posted by やんばちゃん at 23:53Comments(0)八ッ場だより